御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「河田社長の息子のことは俺も前から知っている。まさか、君と付き合っていたなんてな……今だから言うが、あの男はクズだぞ? 父親の金で豪遊三昧、おまけに親の七光りってやつで経営の才能もないのに店を任されてるような男だ」

私の後頭部に手を回し、抱え込むようにしてグッと腕に力を入れられる。

「だから、そんなやつの名前すら口にして欲しくない」

彼の心臓の音がドクドクと伝わってきそうで私の鼓動も早くなる。

「蓮さん、ごめんなさい。私、婚約者だなんて馬鹿なこと言ってしまって……」

「どうして馬鹿なことだと思うんだ? その場しのぎでも、俺はあの男からの逃げ道になれたんだろ? それでもいい。君がその気じゃなくても俺の気持ちは変わらない」

蓮さん、どうして……? どうしてそこまで優しいの?

「蓮さん……」

自分より私の気持ちを優先して、いつも気にかけてくれる。そんな彼が無性に愛おしくて触れたくなった。

どうしよう、私……蓮さんのこと、好き、になっちゃったんだ。
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