御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「ここは築何年の物件だ?」

「築三十年です」

「そうか、それにしてはずいぶん痛み過ぎているな……ここの大家の怠慢さが窺える。春海、ちゃんと引っ越しの準備しておけよ? 明日から俺のマンションで暮らすことになるんだし」

そうだ。明日、役所に籍を入れたら私は有栖川春海になり、このアパートともおさらばだ。

「はい、楽しみにしてますね」

私の未来はこれからどんどん輝いていく。ただのしがないOLが御曹司と結婚することになって、まさにシンデレラストーリーだ。

「春海、そろそろ俺は行かなきゃならないが、今日は休みなんだろ?」

「はい、有休消化で今日一日お休みなんです。引越しの準備をするのにちょうどいい時間が取れました」

「昨夜はずいぶん無理させたからな、ゆっくり休んでくれ」

やんわりと私の腕を引き寄せ、耳元で蓮さんが囁く。

――昨夜はずいぶん無理させたからな

その言葉の意味は私と蓮さんだけの秘密。
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