御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「実のところ、私はこの送られてきた情報は嘘ではないと思っております。なぜなら……先日、あなたにお誕生日のことをお話ししたでしょう?」

緒方さんがじっと私を見据えている。

「記載されている誕生日とあなたの反応が一致しましたので……この情報もデタラメではないものだと」

そうだ、どうして私の誕生日を知ってるんだろうって、不思議に思ってたけど……。

この書類が本当かどうか、確かめるためにカマかけたんだ。

ゾクゾクっと背筋が凍るような思いだった。すっかり冷たくなった指先で別の書類を摘まんで見てみる。

探偵に依頼したとしても、ここまで細かく私のことについて書かれているのに少し違和感があった。しかも“両親は離婚して母子家庭で育ち――”なんて嘘まで混ざっている。

「申し訳ありませんが、蓮様も少しあなたに入れ込み過ぎていらっしゃるようです。旦那様から言われていたお見合いも全部断って、好き勝手やられているようですので……」

お見合い……? それって、私と出会う前の話?

「有栖川家の方たちは、結婚するのにその人自身を見てはくれないんでしょうか?」

「あなたもご存じの通り、有栖川家は一般の結婚とは異なり、由緒正しい家柄との結びつきを重んじております。こう言っては何ですが、高杉様のお家柄とは分不相応でしょう? 万が一、有栖川家に入られたとしても、あなたが苦労なさるだけですよ?」

“分不相応”

蓮さんと過ごす日々が幸せ過ぎて考えないようにしてきたけれど、いざ言葉にしてそう言われると、グサリと胸に突き刺さる。

「このことはあなたを思って伏せておくべきかと思いましたが……」

緒方さんが一拍置いて、続けて口を開いた。

「蓮様にはもうすでに有栖川家で正式に決まった婚約者がおられます。当家に相応しいご令嬢です」
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