14日間の契約結婚~俺様御曹司の宇宙最強の恋物語~

 8年前。
 リラは生まれた子供に愛する人がいる街並みを見せたく、ベビーカーで連れて来た。

 風が強く心地いい日差しの中だった。
 公園で散歩をしながら、ここがお父さんの住んでいる街並みと言って子供に見せていた。
 子供は6ヶ月になり、周りの景色も見えるようになっていてとても喜んでいた。
 

 強い風が吹いてきて、子供の帽子が飛ばされ木の枝に引っ掛かってしまい、リラは帽子をとろうとベビーカーを止め木の枝に手を伸ばした。

 背を向けたリラの隙をついて、黒いつばの広い帽子をかぶった女が近づいてきた。
 そしてベビーカーの中から赤ちゃんを抱き、そのまま走り去った。

 ハッとして振り返ったリラは、走り去る女を目にして追いかけた。

「待って! 待って下さい! その子は私の子供です! 返して下さい! 」

 追いかけるリラを背に、女は車に乗り込みそのまま逃走してしまった。

 走り去る車を追いかけたリラだったが、スピードについてゆけず見失ってしまった。


 その時。
 強い風と共に女から漂って来た香水のような匂いがあった。

 その匂いは。
 茂代から漂う匂いと同じである。

「副社長。すっかり酔い潰れて、覚えていないようですが。あの時、ちゃんと結ばれたんですよ。そしてその時授かった子供が、竜夜君ですよ」

 竜夜は茂代を睨んだまま、リラにしがみ付いた。

「何を勝手なことを言っているんだ。そんな証拠、どこにあるんだ」
「証拠ならありますよ」

 茂代がバッグから母子手帳を取り出して見せた。

「これが証拠です。この記録をたどれば、竜夜君が私の産んだ子供だと分かりますよ」

 ニヤッと笑って勝ち誇った顔をしている茂代。

「悪いが、それはあり得ない」
「どうしてです? 私、副社長としかシタことないんですよ」
「絶対にありえない事だ。なんなら、親子鑑定緒しても構わない」

 勝ち誇った顔をしている茂代の表情が怯んだ。

「そう。そこまで言うなら、いいですよ。親子鑑定をしても。ただし、親子鑑定で私と竜夜君が親子であることが証明されたときは。ちゃんと結婚してもらいますよ」
「その証明が、真実であるなら。それもありうるだろう。だが、俺には何も心当たりはない」

「いいですよ。ちゃんと証明しますから、竜夜君と親子である事。そして、副社長が私を愛してくれた事を。…それまでは、好きにさせてあげるわ、笹野さん」

 キッとリラを睨んで、茂代は去って行った。

 愛人は少し考えこんでいた…。

「お父さん、帰ろう」

 竜夜が愛人の袖をひぱった。

「ああ、帰ってご飯にしよう」

 ちょっと重たい空気を残したまま、そのまま家に戻った愛人達。
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