極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
今日の、私の仕事はこれで終わりといっていい。
あとはボロを出さないように完璧に演じきるのみ。

二十五歳と私と同じ年の花嫁はとても幸せそうだ。
その姿が羨ましくないかといえば……全く。
いまの私には、結婚よりも――恋よりも、大事な夢があるから。

「本日はご出席、ありがとうございました」

見送る本日の主役たちに軽く挨拶をし、会場を出る。
無事完了の連絡を入れようと携帯を出して、事務所からLINEが入っているのに気づいた。

【新規依頼がありますので、帰りに事務所へ寄ってください】

「真っ直ぐ帰ってビール飲みたい……」

が、依頼とあらば行かないわけにはいかない。
返信を入れ、私は駅へと向かった。

私は女優をしている。
といっても舞台やドラマ女優ではなく、結婚式や葬式の出席者、友人や恋人の代わりなど、代理女優としてやっていた。
もっとも、本業は会社員で、こっちは副業だけれど。

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