極上御曹司はかりそめ妻を縛りたい~契約を破ったら即離婚~
「また、結婚式のエキストラなんですかね。
私、明日も入ってるんですけど」

「さあ?
私は依頼主のこと、一切詮索しないことにしているから」

さっさと行け、と軽く彼女が手を振る。
もう四十も半ばを超えた彼女だけど、口の堅さは誰にも引けを取らない。
だからこそ、こんな事務所の事務員なんてやっているのかもしれないけど。

「はーい。
じゃあ、行ってきまーす」

ドアの前に立ち、小さく深呼吸して気持ちを落ち着け、ノックする。

――コン、コン。

「誰だ?」

すぐに中から、所長の声がした。

「染宮です」

「入れ」

「失礼しま……」

ドアを開けて固まった。
だって、こんな事務所にいるのがふさわしくない、男がそこにいたから。

「なにをしている、さっさと入れ」

「あっ、はい……」

所長の声で我に返り、慌てて中に入った。
彼女に促され、その隣に座る。

……うわっ、私、場違いだよ。

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