彼が冷たかった理由。
「渉、一緒に帰ろう」

隣の席の彼が席を立つ前に、私は手を取る。
しかし彼はその手を振り払って、教室を出ていってしまった。

...ここ最近そうだ。

付き合って二ヶ月。彼は私が離れないと知ると、冷たくなっていった。

「優愛、悪いんだけど、日誌手伝ってくれないかな」

「え?あぁ、うん。わかった」

そう私に手伝いを求めたのは、今日の日直の田中君。
同じく日直だった女子は、今日欠席で、一人で日誌を書くのに苦労していたようだった。

黒板を消して、日誌を書く。

2人1組が最適だろう。

「そういえば今日の渉、ずっと寝てたよなぁ」

「...そうだね」

「起こしてあげないの?」

「いい夢見てるのに起こしたら、私が悪者でしょ」

そう笑う。
渉はきっと、私のことが嫌いだ。

だけど【彼女持ち】というステータスのために付き合っているのではないだろうか。

「悪者って、彼女に起こされたら誰でも嬉しいと思うけど」

「渉は私のこともう好きじゃないみたいだし、自然消滅してるんじゃないかな」

「...っえ、あいつとなんも話してないの」

「2週間くらい一言も話してくれないよ」

授業は寝てるから、2人1組のペアを組む時だって、私は余る。

それか、3人のところに入れてもらうかの2択だ。

「ふぅん...別れようとは思わないわけ?」

「あー、考えたこと無かった、かな。
私自身はまだ好きだから」

「依存ってやつ?」

「...そうなのかもしれないね」
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