大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「も、申し訳ない」


いつも傲慢で決して他人に頭を下げたりしない父が、敏正さんに首を垂れる。


「頭を下げる相手が違います。郁子さんに謝罪してください」


敏正さんは唇を噛みしめ悔しそうな表情で、父に告げる。


「郁子。すまなかった」


畳に擦るほど頭を下げて謝られた瞬間、我慢していた涙が頬にこぼれた。


「二度と、郁子さんを……いや、泰子さんも貫一くんも泣かせないと誓ってください。そうでなければ、今後の援助は中止します」

「や、約束します。泣かせません」


こんなに小さくなった父を初めて見た私は驚きつつ、父の反省を促してくれた敏正さんに感謝した。


「それでは改めて。郁子さんとの結婚をお許しいただきたく、本日は参りました」


今度は、仕切り直した敏正さんが腰を折る。


「もちろんです。どうか郁子をお願いします」

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