大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「若輩者ではございますが、申し上げさせていただきます。お父上は、遊女の行く末をご存じだったはず。そのくせ、必死に働けば数年で戻ってこられると思っていた郁子さんを黙って見送られた。ご自身がお作りになった借金のためにです」

「は、はい」


眉をつり上げる敏正さんは、私が知っている穏やかな彼の面影もない。


「遊女の多くが命を落とすのは、もちろん承知されていますよね」


敏正さんがズバリ切り込むと、父は目を泳がせる。


「父上は、郁子さんに死を命じたのも同じ」

「そ、そのようなつもりは……」

「それでは、運よく生き残って戻ってくると楽観視されていたんですか? 子爵さまとはいえ商売に携わる者が、そんな根拠もない予測を信じておられたとでも? それでは三谷商店が傾くのも仕方がありませんね」


敏正さんの辛辣な言葉は父にとっては耳が痛いだろう。
しかし的を射ている。


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