大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「春江。それは間違っているぞ。結婚してからも楽しいはずだ。郁子。食べたら出かけるからそのつもりで」


敏正さんは思いがけない言葉を置いて炊事場を出ていった。


「なんてうらやましい! この調子ではお子さまを授かるのも早いかもしれませんね。楽しみだわ」


子を?

結婚するのだからそういう話が出るのも当然だ。

しかし、政略結婚であるがゆえ、三谷商店の立て直しのことで頭がいっぱいだった私は、子についてなどまったく頭になかった。


祝言は三カ月ほど先の九月の上旬に、津田家の本邸でたくさんのお客さまを招いてと決まっている。

その祝言のあと、敏正さんと結ばれるの?

まだ夢見心地な私は、あいまいに笑ってごまかしたあと、再び手を動かし始めた。



日本橋に出かけるということで、また春江さんが着替えを手伝ってくれる。

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