大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
早く着きすぎた私は、ソワソワしながら彼女の到着を待ちわびていた。


「おひとりですか?」


すると、敏正さんより少し年上だろうか。
着流し姿のふたりの男性が声をかけてくる。


「お友達と待ち合わせですの」


正直に答えると、男たちは顔を見合わせてニヤリと笑う。

この嫌らしい笑い方、女衒と似ているわ……。


「そのお友達も一緒に遊びませんか? 俺たち、すごくいいカフェーを知っているんです」


もしや誘われているの?


「いえ、結構です。カフェーなら私も知っておりますから」


女学生時代、コーヒーを五銭、そしてドーナツという生洋菓子も五銭で楽しめるカフェーが話題になって、富子と一緒によく通った。

今日も行きたいと思っていたところだ。


「でしたらちょうどいい。一緒に行きましょう」


すぐにあきらめると思ったのに、食い下がられて困る。


「お断りしますわ。夫に叱られますもの」


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