大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「敏正さん、変わりましたね」


一橋さんがクスッと笑うので、恥ずかしくなった。


「郁子、浮気するなよ?」

「も、もちろんです。行ってらっしゃいませ」


敏正さんの言葉に驚きつつ返事をすると、一橋さんは苦笑しながら車に乗り込んで去っていった。


お見送りをしたあとは、急いで身支度を整え始める。


「郁子さま。こちらのほうがいいですって」


私が地味目の着物を選ぶと、春江さんは薄い秋の空のような秘色(ひそく)色の着物を勧めてくる。


「派手ではありませんか?」

「ちっとも。敏正さまがお選びになったお着物に間違いなどありません」


母のように敏正さんを褒める春江さんが微笑ましく、私は素直に従った。

そして高揚した気持ちで銀座に向かう電車に飛び乗った。


富子との待ち合わせは、四丁目の交差点。
時計塔のあったビルヂングは建て替え工事中だ。

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