大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
父の世間知らずとどんぶり勘定のせいで傾いた三谷商店を手助けしたいという気持ちもあったので、より勉強に身が入ったのかもしれない。


「郁子」


一度始めたら没頭してしまい、階下から聞こえる敏正さんの声で我に返った。


「いけない。お出迎え!」


疲れて帰ってきた彼を玄関でお迎えしないなんて、なんたる失態。
私は着物の裾をちょっと持ち上げて階段を駆け下りた。


「あ……」


勢いよく下りたところに敏正さんが口をあんぐり開けて立っていたため、やってしまったと顔が青ざめる。

こんなふうに着物をまくり上げて、なんとはしたない。

色香を身につけたいともがいていたのに、逆行している気さえする。


「申し訳、ありません」
「あっははは」


とっさに謝罪すると、大笑いされてしまい彼を見上げる。


「よかった。安心した。最近の郁子は火が消えたかのように静かで、心配していたんだぞ。これでこそ郁子だ」


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