大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
でも、彼の目が他の女性に向き、もういらないと追い出されるのが怖い。

自室にこもって、着物の襟元をいつもより大きくはだけさせてみたり、いつも下ろしている髪を結ってみたりと、なんとか艶冶(えんや)な女性を演出できないかと画策してみた。

しかし姿見に映る自分が、子供が茶番を演じているようにしか見えず、まったく似合わない。

なにをやっているのだろうと急に冷静になり、自分であきれる始末だ。


色香など、一朝一夕で身につくものではないのかもしれないと考え直し、一旦あきらめて算術の本を開いた。

本屋で女学生の頃に学んでいた算術の本を見つけたので思わず手に取り、購入してきてあったのだ。


「こっちのほうが楽ね」


女学校時代、富子をはじめとした友人たちは、将来役に立ちそうにない算術なんてやりたくないと話していたが、私は結構好きだった。

< 156 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop