大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
私は彼に続いて、再び階段を上がった。

障子を開けたままで出ていったせいで、敏正さんが私の算術の本に気づいてしまった。


「あれはなに?」
「算術の勉強をと思い、買い求めてきました」
「算術? そういえば女学校でも学んでいたと話していたね」


そんな些細な会話を覚えているの?


「はい。難しいのですが楽しくて」

「楽しいならいい。お前は母上と同じで、なにかしていないと気が済まない性分のようだし」

「お母さま?」


まだ数回しかお目にかかったことはないけれど、とても女性らしい素敵な方だ。


「そう。母上も津田の家に嫁いだときは、どんなに止めても部屋の掃除をやめなかったそうだよ。ちなみに今でも女中と一緒に家事に精を出しているらしい」
「今でもって!?」


たしかに、お父さまにもよく似ているとは言われたけれど、まさか津田紡績という大きな会社の社長夫人となった今も、家事をしているとはびっくりだ。


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