大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
これではこの先、敏正さんの妻は務まらない。

たとえ心に別の女性がいたとしても、彼は将来津田紡績を引っ張るお方。

会社のために自身の結婚も犠牲にして踏ん張っているというのに、私が足を引っ張るなんてもってのほか。


吉原の大門の前に立ったとき、すべてを捨てる覚悟があったのだから、これくらいで動じるわけにはいかない。


「少し休憩します。もうお昼ですね」
「今日もお弁当? いい奥さまね」
「松尾さんは嫁に行かないんですか?」


私の弁当箱を覗き込む松尾さんに、高山さんが尋ねた。


「行くわよ、近いうちに」
「それって……」


いつもきびきびしている松尾さんが妙に照れた顔をしているので、気持ちが上昇していく。


「婚約したの。春くらいに、嫁に行く予定」
「おめでとうございます!」


私が勢いよく立ち上がりお祝いを口にすると、松尾さんがクスクス笑っている。


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