大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
それをうらやましいと感じている自分に気づき、ハッとした。

子爵家に生まれたからには、父が決めたお相手のところに嫁ぐ覚悟があった。

それなのに私、こんなに恋愛結婚にあこがれていたんだわ。


「それじゃあ、もう安泰ですね。私まで幸せな気持ちになれました」

「郁子さんは、皆がうらやましがるような結婚をしてるじゃない。幸せでしょう?」

「……そう、ですね」


少し前なら「はい」と勢いよく答えたのに、今は戸惑いを隠せなかった。



その日。敏正さんは十七時過ぎに帰宅した。

こんなに早いのは初めてで、慌てて玄関へと出迎えに走る。


「郁子。これから吉原に行かなくてはならなくなった。すまないが夕食はいらない。夜は冷えそうだから、外套を出してくれるか?」


どうして平然と吉原に行くなんて妻に言えるの?

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