大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
まさか、敏正さんほどの人が、自信がなかったとでも?


「ずっと会社のことだけを考えて生きてきたからか、女の口説き方のひとつも知らない。父や母の仲睦まじい様子を見てきて、いつかあんな温かい家庭を持ちたいと思っていたのに、いざ理想そのものの女を前にしたら、焦りと不安ばかりで、仕事のような手段で郁子を妻にしてしまった」


彼はとんでもなく不器用な人なのかもしれない。


「情けないな。妻を苦しませるまで気がつかないとは」


落胆した声が耳に届き、胸が痛い。


「敏正さんは……。まだ私を好いてくださっていますか?」
「もちろんだ」


彼は体を離したかと思うと、熱を孕んだ視線を向けてきて、指でそっと私の唇をなぞる。


「何度この唇に口づけしたいと思ったか」


視線が絡まり合い、全身が熱を帯びていく。

私も……彼の唇が欲しい。


「口づけ、してください」


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