大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「貫一、元気でしたか?」
「泰子姉さまが連れてきてくれたの?」
「うん」


貫一は私に会えたのがよほどうれしいのか、着物をつかんだまま離そうとしない。


「貫一、カステラがあるの。泰子と二階で食べなさい。私もすぐに行くから」


どうやら父は不在らしいが、女中なら怒りの理由を知っているかもしれないと思い、ふたりを二階に促した。


「すぐに来てね」
「はいはい。わかりましたよ」


笑顔で送り出すと、貫一は何度も振り返りながら、泰子に背中を押されて階段を上がっていった。


「元子(もとこ)さん、ちょっといい?」


私は長く三谷家を支えてくれている五十代の女中頭に声をかける。


「はい。旦那さまのことですね?」
「うん」


彼女は承知している様子で、他の女中に二階にお茶を運ぶように指示をしてから、私を座敷に通してくれた。

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