大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
私にも日本茶を用意してくれた彼女は、すぐ近くに正座した。


「ありがとう。泰子から聞いたのだけど、お父さまが怒っていらっしゃるとか。なにがあったのか知っているかしら」

「それが、すさまじい剣幕でしたので、とてもお尋ねできる状態ではなく……」


元子さんは申し訳なさそうに話すが、泰子ですら無理なのだから女中の立場ではそうなるのが普通だ。


「そうよね。心当たりはない?」
「あの……」


うつむく彼女は、チラッと私を見てから口を開く。


「旦那さまが、津田さまにだまされたとかなんとか……」
「敏正さんに?」


どういうこと?


「はい。くわしくはわかりかねますが、とにかく郁子さまをだしにうまくだましたとかなんとか。いきなりの結婚話も、五千圓も、このための布石だったと」


このためって、なに?

敏正さんの様子がおかしかったのは、父の怒りと関係があるの?


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