大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
貫一が私の手を引き、新しい詰襟の制服の前まで連れていく。


「そうなの?」

「一橋さんが来られたときにつんつるてんなのに気づかれて、それで津田さまからって。私も着物をいただいたの」


言葉足らずな貫一の代わりに泰子が教えてくれる。


そんな話、初耳だ。
敏正さんはきっと、私が気にすると思って黙っていたのだろう。

それほど心温かい敏正さんが、だますってなに?


元子さんの話に動揺している私は、しばらく口を利けなかった。

その代わり、貫一が学校であったことをたくさん話してくれた。「うん、うん」と相槌を打つだけでとても楽しそうだ。

やはりまだ母親が必要な年頃なのだろう。


「お父さま、帰ってこないわね」


柱時計がボーンボーンと六つ音を奏でたものの、父が帰宅する気配はない。


「もう帰らなくちゃ。貫一。私、もっと遊びに来るようにするわ」

「本当ですか?」

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