大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「それでは今度は私が作りますね。今日は……三谷の家に行っていて遅くなったんです」


切り出すと、にこやかだった彼の表情が引き締まった。


「そう」
「貫一の制服と、泰子に着物をありがとうございます」
「あぁ。かわいい義妹と義弟だからね、それくらいは」


目を弓なりに細める優しい彼が、なにをだますというの?

疑心暗鬼に陥ったり、やっぱり彼を信じたり、心が忙しく揺れ動く。


「泰子が訪ねてきたんです」


私が再び口を開くと、敏正さんは真剣な表情に戻りうなずいた。


「父が、ひどく憤慨していて手がつけられないと。泰子はなにに怒っているのかわからないと話してましたが、女中が……」


そこから先を言いよどむ。敏正さんの答えが怖いからだ。

なにをだまされたのかもわからないこの状況では、尋ねるしかない。

< 291 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop