大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「いえ。待っていたのですが帰ってこなくて。会社にもいないということでしたので、まだ」


ありのままを伝えると、彼は腰を上げて私の隣までやってきた。
そして、真摯な視線を向けてくる。


「今はまだなにも言えない。すまない、郁子」
「嫌っ」


両肩に手を置かれて、思わず振り払ってしまった。


「どうして? どうして、くだらないと笑い飛ばしてくださらないの?」
「郁子……」


なにもわからないのは不安なの。


「明日まで待ってくれ」

「なんで? 私には話せないことなのですか? 敏正さんはどうして私と結婚したの?」


愛してると言ってくれたのに。
あれもすべて嘘だったの?

もうなにを考えていいのかわからないほど混乱し、私はそのまま二階に駆け上がった。


「郁子」


自室の障子をピシャリと閉めると、追いかけてきた敏正さんの悲痛な声が聞こえてくる。


「ひとりにしてください」
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