大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
春江さんは私の部屋に入ってくると正座し、眉間にシワを寄せる。


「郁子さま。お眠りになられなかったのですか?」


ひと目で寝ていないとわかるほどひどい顔をしているのだろうか。


「ちょっと、眠れなくて」


じっと見つめられるのがいたたまれず、視線を畳に落として答える。


「敏正さまはもうお出かけになりました」
「そう……」


知っていたけれど、知らなかったふりをした。
私は不安なまま取り残されてしまった。


「今朝は敏正さまも、ひどいお顔をされていまして。あんなにいい男でいらっしゃるのに台無しで」


春江さんは私から視線を外してひとり言のように話しだす。


「郁子さまを傷つけたとおっしゃるので、雷を落とさせていただきました。女中の分際で主人に盾つくなんて、身の程知らずですよね」


春江さんが怒ってくれたの?

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