大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
私が少し身を乗り出すと、彼女はまるで母親のように優しく微笑んだ。


「どれだけ仕事がおできになっても妻を幸せにできないなんて、情けない。どんな事情があれど、妻を泣かせるなど言語道断と」

「春江さん……」


女中が主人に意見するなんて。
しかも強い口調だったようで、かなりの覚悟があっての上だとわかる。

彼女は私のために、進退をかけてくれたのだと感じた。


「敏正さまとの結婚は……会社のためだったんですね」
「どうしてそれを?」


目を見開くと、彼女は難しい顔をして続ける。


「結婚されたばかりの頃、玄関先で一橋さんと敏正さまがお話になられていたのを小耳に挟んでしまったんです。でも、おふたりが次第に打ち解けていかれるのが手にとるようにわかって、ようやく本物の夫婦になられたと、うれしかったんですよ」


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