大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
なにかあるのは間違いないが、彼も苦しんでいるのだ。


「そう、よね」


私は彼女から離れて涙を拭いた。


「春江さん。私……敏正さんがとても大切なの」

「はい」

「自分の目で、彼がなにをしようとしているのか確かめます」


おそらく、落成式でなにかがある。
父も姿を見せるはずだし、敏正さんは『明日まで待ってくれ』とはっきり言った。


「承知しました」


彼女の微笑みは、賛成と同意のはず。


「ここで待っていてくれますか? 私と敏正さんを」
「郁子さま……。かしこまりました」


春江さんが出ていってしまう気がしてそう言うと、みるみる瞳を潤ませた彼女は、大きくうなずいてから深く頭を下げた。



それから私は家を飛び出した。
電車に乗り、丸の内を目指す。

式典は九時から、丸の内三谷ビルヂングで関係者を集めて行われると聞いている。


「間に合って……」


< 300 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop