大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
あのときたしか松尾さんは敏正さんのことを『使えるものはなんでも使うし、いらなくなったらあっさりと切り捨てる』と、話していた。

――つまり、新しく三谷商事としての出発が決まった今、父はもう用済みなの?

着々と津田紡績から人材をつぎ込み、すでに三谷商店の取引先はすべて把握しているはずだ。

会社も真新しいビルヂングも、津田紡績のものになってしまったとか? 
会社ごと乗っ取られたの?


そう考えだしたら、全身の肌が粟立ち、呼吸が浅くなって肺に酸素が入ってくる気がしない。


「そんな……」


もし想像通りであれば、いくら津田紡績のためとはいえ、敏正さんの行為がひどく残酷に思える。

たとえ本意でなかったとしても、だ。


吉原で拾ってくれたのもあの五千圓も、善意だったかもしれない。

けれども賢い敏正さんは、三谷商店の経営状態などを知り、そのあとは大芝居を打ったのだろう。

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