大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
こんな事態に陥るなら、やはり私が吉原に身を落とすべきだったのではないかなんて、頭をよぎる。

ううん。菊乃さんの涙を見たでしょう? 
助けてもらえてよかったの。

それに、春江さんの前で敏正さんが動揺を見せたのは、なぜ? 
それも演技?

混乱して考えがまとまらない。

胸を押さえて必死に気持ちを落ち着けようとしているうちに、電車は東京駅に滑り込んだ。


駅舎を出ると、太陽に照らされて輝く三谷ビルヂングの白い壁が見える。

このビルヂングが三谷家の再興の第一歩のはずだったのに。

緊張で手に汗握る。
しかし、この目で敏正さんがなにをしようとしているのかをきちんと見たい。


九時まであと三分しかない。
私は着物の裾を少し持ち上げて走りだした。

ビルヂングの前には人だかりができている。

順に一階の式典会場となる大広間に誘導されて、並べられた椅子に着席していっているようだ。

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