大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
背広を纏った人だけでなく、紋付き袴の正装姿の人までいて、三谷商事の門出を祝いに来てくれているのがわかった。


「どこ?」


人ごみをかき分けて広間まで進むも、敏正さんらしき人は見えない。
関係者なのだから、控室だろうか。

一旦広間を出ようとしたそのとき、演壇に三つ揃え姿の男性が数人登壇し、人々の注目が集まった。


「一橋さんだ」


その一団の中にいた一橋さんが前に立って話し始めた。


「本日は丸の内三谷ビルヂングの完成式典にお集まりいただき、ありがとうございました。本日はビルヂングの完成だけでなく、三谷商店改め三谷商事の門出となります」


敏正さんはどこ?

座りきれなかったお客さまとともに広間のうしろに立ち目を凝らしたものの、それらしき姿はない。


「それでは、社長に就任いたしました一ノ瀬よりご挨拶を申し上げます」


そのとき、聞こえてきた一橋さんの声に耳を疑った。

< 305 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop