大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
社長に就任した? 社長は父ではないの? 
やはり、三谷商店は津田紡績のものになってしまったんだ。

予感が的中して、動揺のあまり視線が宙を舞う。


社長と紹介されて演壇に上がったのは、祝言のときに優しく話しかけてくれた一ノ瀬さんだった。

今朝、迎えの自動車に乗っていたのも彼だったかもしれない。

津田紡績副社長の一ノ瀬さんが、三谷商事の社長を兼任するの?

父は? 社長だったはずの父はどこ? 
もうきっぱりと切り捨てられて、この場にもいない、とか?

緊張で鼓動が速くなるのを感じながら、唇を噛みしめる。

津田紡績の関係者の近くに行こうと足を踏み出したそのとき、挨拶に立った一ノ瀬さんのところに会場の隅から男が駆け寄った。


「お父さま……?」


間違いない、父だ。


父が一ノ瀬さんの胸ぐらをつかむと、一橋さんをはじめとした側近の人たちが父を羽交い絞めにして引き離す。


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