大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「父上。頭を冷やしてください。孝義さん、ご自宅までお送りしてください」
「承知しました」


肩を落とし言葉を発しない父は、小さくなったまま一橋さんと一緒に出ていった。


「郁子。申し訳なかった」


敏正さんがいきなり深く頭を下げるのでひどく驚く。


「な、なにをなさっているのですか?」


窮地を救ってくれたのに、謝られるいわれがない。


「今日の計画は、あの男をおびき出すためのもの。警察と俺、一橋さん、あとは一ノ瀬さんしか知らなかった。あの男は嗅覚が鋭い。逃げられてはもう捕らえられないかもしれないと緘口令が敷かれて、父上と連絡が取れる郁子にも話せなかった」


それで歯切れの悪い答えしか返ってこなかったのか。


「仕方がなかったとはいえ、郁子を泣かせてしまった。夫としては失格だ」


苦しそうに再び首を垂れる敏正さんに慌てる。


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