大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
樽から味噌を取り出し始めたたみさんに視線を送る敏正さんは、私の耳元で口を開く。


「味噌も輸出できないかと模索しているんだよ」
「まあ、そうでしたか」


江戸切子をきっかけに、三谷商事は日本の文化の輸出に積極的だ。
欧米の人たちにも受け入れられるといいな。

味噌を用意してくれたたみさんに料金を払うと、彼女は他の従業員をチラリと見てから店の外まで見送りに出てくれた。


「その節は、本当にありがとうございました。またお会いできるとは」

「元気そうでよかったよ。たみが身請け先の味噌屋で働いていると小耳に挟んで、郁子が会いたいだろうなと」

「あらまあ、奥さまの気遣いばかり。惚気ですか?」


敏正さんはたみさんに茶化されている。


「そうだな、惚気だ。惚れているのだから仕方あるまい」

「敏正さん?」


恥ずかしいからそれ以上はやめて。

私が慌てふためくとふたりはケラケラ笑う。
< 330 / 338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop