大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「それじゃあ、ちょうどいいな」


クスクス笑う彼との穏やかな時間がずっと続きますように、と心の中で願った。



それから銀座に寄って、春江さんの大好物の大福をお土産に買い、家路についた。

ところが、タクシーで家まであと数分という頃、なんだか気分が悪くなってきて敏正さんに体を預ける。


「郁子。どうした? 唇が真っ青だ」


慌てた様子で私の顔を覗き込む敏正さんは、「横になれ」と私の頭を膝に誘導してくれる。


「少し気分がすぐれなくて」
「車の揺れに酔ったのか?」


そうだろうか。
今までに何度も津田紡績所有の自動車に乗せてもらったことはあるし、タクシーも初めてではない。

けれども、一度もこんなふうになった経験はなかった。


「わかりま……」


途中で口を閉ざしたのは、気分の悪さを自覚したら急速にひどくなってきたからだ。


「もう家だ。帰ったら医者を呼ぼう。急いでくれ」
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