大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
運転手に指示を出した敏正さんは、私の背中をさすった。
敏正さんに抱き上げられて家の玄関を入ると、春江さんがすぐに顔を出した。
「春江。郁子の調子がすぐれない。医者を呼んでくれ」
「は、はいっ」
彼女はすぐさま外へ駆け出していく。
この家には電話が備えつけられているが、近所の医院にはまだないからだ。
てきぱきと布団を敷いた敏正さんは、私の帯をほどき長襦袢姿にしたあと寝かせてくれる。
そして、枕もとに座り心配そうに顔をゆがめた。
「すまない。無理をさせたか?」
「大丈夫ですよ。今日は車に揺られていただけでしょう?」
彼が過剰に反省しているので首を横に振る。
お休みの日は朝から庭掃除をすることが多く、もっと動いている。
それに、会社に行く日は比べ物にならないほど忙しいから、無理をしたという自覚はまったくない。
「そうか。やはり乗り物酔いか……」