大正蜜恋政略結婚【元号旦那様シリーズ大正編】
「あんなにたくさんの着物はいただけません。それに……私は実家に帰――」
「誰が帰っていいと言った」


背後から強い口調でくぎを刺したのは敏正さんだ。


「ですが」


三谷の家に手を貸してくれるというありがたい申し出までしてもらい、さらに私がここで厄介になる理由はない。

父の顔は見たくないが、帰るべきだ。


「帰さないぞ。俺は怒っているんだ」

「怒って?」

「あぁ。郁子の父上の行為は、郁子への侮辱。そのような人間のもとに戻すわけにはいかない。俺が眠れなくなる」


敏正さんの言葉に驚き、目を見開いた。


だって、俺が眠れなくなるなんて。
それほど私の身を案じてくれているとは、驚愕だったのだ。


「郁子さま。私も賛成ですわ。折檻されていたご生家にお戻りになるなんてありえません」


春江さんが鼻息を荒くする。

そういえば、折檻から逃げてきたということにしてあるんだった。

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