五年越しの、君にキス。
「あれ、わからなかった?要するに、このお見合いを受けて俺と結婚すれば、柳屋茶園を仕入れ先の第一候補として確実に推してあげられる。それに加えて、柳屋茶園がベリーヒルズ・モールのテナントを維持するための資金援助だってしてあげられるよ、ってこと」
顔を強張らせる私に、伊祥がにこりと笑いかけてくる。
「私のこと、脅してる?」
「脅してるんじゃないよ。口説いてんの。五年越しに」
警戒して顔を引き攣らせると、伊祥が意地悪く口端を引き上げながら軽く首を横に傾けた。
五年越しに口説いてる、だなんて……
本気かどうかわからない伊祥の言葉に、少し動揺する。
「だ、誰がどう聞いたって、ほとんど脅しじゃない。それに、利益があるのは柳屋茶園だけで、そっちに特別な利益があるとも思えない」
「そんなことないよ。俺は、今回の和風カフェを成功させるために、柳屋茶園との縁が重要だと思ってる。ベリーヒルズ店の売り上げが落ちているとはいえ、ここのモールの飲食店の八割以上が昔から柳屋茶園のお茶を出してるよね?梨良の養父母の店のお茶は、最高級だよ」
私が何を言っても伊祥の笑顔は崩れない。
それどころか、とても冷静に、選び抜かれた言葉で私のことを的確に追い詰めてくる。