五年越しの、君にキス。
「とりあえず、言い訳はこれから一緒に暮らすなかで、ゆっくり聞かせてもらおうかな」
私の左手をとった伊祥が、シルバーの指輪をかつての定位置だった薬指へと嵌る。
五年ぶりでもぴったりとそこに嵌る指輪を見つめていると、顔を寄せてきた伊祥が私の耳元にささやいた。
「異論がなければ、これでお見合い成立ってことで」
「え?ちょっと待って」
いつのまにか流されてしまっていたことに気付いてはっとする。
嵌められた指輪を外そうとしたら、伊祥が私の左手を取り押さえてにこやかに微笑んだ。
「せっかく見つけたのに、逃すと思う?仮に今この場で断ったとしても、俺は梨良のこと諦めないよ」
少し距離を詰めてきた伊祥が、私の顎に手をあてる。
小さく肩を揺らす私に余裕げに微笑むと、伊祥が親指の腹で私の唇の形をゆっくりとなぞった。
おもむろに顔を寄せてきた伊祥を直視できずに目を閉じると、彼の纏う甘い香りがほのかに漂ってくる。