五年越しの、君にキス。
「食べ物屋じゃなくて、別のところ。こっちだったかな」
そう言って、伊祥が私の手を繋いだままどこかに引っ張っていく。
婚約が決まって同じ家に住み始めてから、また昔のようにふたりで並んで歩くようになった。
でも、こんなふうに伊祥と手を繋ぐのは五年ぶりかもしれない。
指を絡めたりはしない、ただ手のひらを合わせて握るだけの普通の繋ぎ方だけれど、『五年ぶり』だと意識した途端に手が汗ばんでくる。
私の手を引いて少しだけ前を歩く、伊祥の後ろ姿をじっと見つめる。
五年前の私は、彼の栗色の頭を見上げながら、その背中を追いかけるようにして歩くのが好きだった。
どこにいても堂々としている伊祥に手を引かれて歩いていれば、いつだって正しい場所に導いてもらえるような気がした。
伊祥に手を引かれて歩くあいだに、五年ぶりのその感覚が戻ってくる。
昔よりも少し肩幅がしっかりしたように思える伊祥の背中が、あの頃以上に私の胸を高鳴らせた。