五年越しの、君にキス。
「お昼は食べるものある?」
「今は食欲ないけど、家の前まで送ってくれた秘書に、スポーツドリンクとか飲むゼリーとか持たされたから、とりあえず平気」
「そう……」
伊祥のことが気になるけれど、それ以上かける言葉が見つからない。
「もしかして、心配してくれてる?」
黙り込んでいると、伊祥が掠れた声でそう尋ねてきた。
「少しくらいは……」
それに、朝の時点で伊祥の体調不良に気付けなかった反省もある。
ぼそりと答えると、伊祥が少し笑ったような気がした。
「じゃぁ、仕事から帰ってきたらお粥作って。卵が入ってるやつ」
「いいけど……」
「ありがとう。じゃぁ、夜にはそれ食べられるように、今からおとなしく寝とく」
「うん……」
「梨良、仕事終わったら早く帰ってきて」
甘えるような伊祥の声に、少し苦しげな吐息が混じる。
「わかった。終わったらすぐ帰るから。ちゃんと寝て」
「うん。ごめん、ほんとにもう寝る」
「おやすみ」
私の言葉を待ってから、通話が切れる。
伊祥の弱々しい声が気になったけれど、午後の仕事は休めない。
昼休憩が終わって仕事に戻っても、伊祥のことがずっと気がかりだった。