五年越しの、君にキス。
◇
勤務時間いっぱいまで仕事をして急いで家に帰ると、ちょうど玄関を入ったところで家政婦の冬木さんと鉢合わせになった。
「おかえりなさいませ、梨良さん」
「あ、こんにちは。今日って冬木さんが来られる日だったんですね」
「はい。伊祥さんがおやすみになっているお部屋以外はお掃除させていただいて、今から帰るところです」
靴を履いて、外に出るところだった冬木さんがにこやかに笑う。
冬木さんは笑顔の柔らかいお母さんのような人で、私がここに住み始める前から伊祥付きの家政婦として働いている。
私が来るまでは、ほぼ毎日のように伊祥の食事の準備や掃除・洗濯などのお世話をしてくれていたらしいのだけど、今は週に三日だけ、部屋の掃除や夕食の用意を手伝いに来てくれている。
電話での伊祥の声があまりに気怠そうで弱々しかったから、てっきり、三LDKの広い家でひとりきりで寝込んでいるのかと思ったけど……