五年越しの、君にキス。



ブティックにたくさん並べられたドレスの中から、露出が少なめのベージュのドレスを選んで試着する。

鏡で軽く髪の毛を整えてから試着室のカーテンを開けると、ソファーに足を組んで座っていた伊祥が顔をあげた。

「どう、かな……」

試着したドレスのスカートに視線を落としながら、自信のない声で感想を求める。

「うーん」

だけど、ソファーの肘掛けに頬杖をついて私を見つめる伊祥の反応はイマイチだった。

ここまでで、ネイビー、黒、ベージュと三種類ほど着てみたけれど、伊祥の反応はどれも薄い。

伊祥に手を引かれてブティックの店内に入った私は、総勢で出迎えてくれたスタッフの方たちに仰々しくお辞儀をされて、そのまま流されるように広い試着室のあるプライベートルームのような場所に通された。

その部屋に用意された衣装棚には端から端までびっしりとカラードレスが並べられていて。

振り向いた伊祥に「ここから梨良の好きなのをいくつか選んで」と、有無を言わさないような笑顔で微笑みかけられた。

そうして、何だかよくわからないままに、今に至る。 
 
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