五年越しの、君にキス。
口に含んだお抹茶は柳屋茶園のものだ。慣れ親しんだその味に、私の気持ちが少し落ち着いた。
本題に入るなら、タイミングは今だ。そう思って、小さく咳払いする。
「あの……、この結婚、本気で勧めるつもり、ですか?」
お見合いの話を持ちかけられてからずっとなかなか聞き出せなかった。その質問を、覚悟を決めてようやく切り出す。
「ん、何?もしかして、梨良は断るつもりだったの?」
茶碗をテーブルに置いた彼が、私に問い返しながらにこにこと笑った。
その顔には満面の笑みが浮かべられているのに、その声にはなんとなく、このお見合いを断らせまいとするような妙な威圧感がある。
私の前で妙な威圧感を含んだ笑みを浮かべているこの男──── 美藤 伊祥は、ベリーヒルズビレッジの高層ビルにオフィスを構える大手持株会社、美藤ホールディングスの代表のご子息だ。
そんな男から、私は今、お見合いを経ての結婚を要求されている。