五年越しの、君にキス。
「だって、どうして私なのかわからない。あなたの立場なら、結婚相手なんて選び放題なはずだし。私と再会したあの日だって、どなたかとのお見合い中だったんでしょ?」
「その言い方には語弊があるかな。言ったと思うけど、今後のお付き合いをちょうどお断りをしたタイミングで、庭園をとぼとぼ歩いてる梨良のことを見つけたんだよ」
「だからって……たまたま再会した私にいきなりお見合いを申し込んでくるとか、ちょっと性急すぎる。それに、私の家柄はあなたがこれまでお見合いしてきた方たちとは違うでしょう。美藤ホールディングスの御曹司のお見合い相手としては、釣り合わない」
にこにこ笑いながら私を見てくる伊祥だったけれど、彼はこれまでに私以外の女性とも何度かお見合いをしてきている。
きっとその人たちのなかに、私よりもずっと彼や美藤ホールディングスにとって好条件な女性がいたはずだ。
それなのに……