五年越しの、君にキス。


「さっと挨拶回りだけしたら、適当に抜けよう」

パーティー会場の入り口を見つめながら、伊祥が心底面倒臭そうにつぶやく。

ずっとパーティーへの出席を渋っていた伊祥は、当日ドタキャンすることを本気で考えていたみたいなのだけれど。

そんな心の内を見透かすように、パーティー当日の朝早くに伊祥のお父様が出席確認の電話をかけてきた。

お父様は、伊祥と話しただけでは信用できないと思ったのか、わざわざ私とまで電話を代わり、『必ず伊祥を連れてパーティー会場に顔を出すように』ときつく念を押してきた。

ギリギリでのドタキャンができない状況に追い込まれた伊祥は、家からパーティー会場に来るまでも、身支度のために借りたホテル部屋で着替えているあいだも、ずっと不服そうな表情を浮かべたままでいる。

「ここまで来て、文句を言っても仕方ないじゃない」

苦笑いを浮かべながらそう言うと、振り向いた伊祥がますます不服そうな顔をした。

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