キミだけのヒーロー
オレが入った後も、ちぃちゃんは窓の外をキョロキョロと見回していた。

シィを探しているんだということはすぐにわかった。


「シィなら、今日は休みやで」


「え? そうなん?」


「うん。風邪ひいたって」


とたんに不安そうな顔になる。

シィのことが心配でしょうがない――そんな表情だった。


そんな姿を見ていると胸がキュッと切なくなった。


ちぃちゃんは相変わらずシィに片想いしている。

それは多分、実ることのない恋だとオレは思ってる。


シィはダメだ。

アイツの目にはユカリしか映っていない。

だけど、ユカリには大学生の彼氏がいるから、シィも相変わらず片想い中だ。



ユカリとシィとちぃちゃん。

三人が三人ともそれぞれの想いを抱えている。

そばで見ているオレからすれば、それは永遠に交じり合わないような気がしていた。
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