キミだけのヒーロー
小さな女の子が一人で雨宿りをしていた。

色白で大きな瞳の愛らしい顔立ちに、顎のラインでパッツンと切りそろえられた黒髪が印象的だった。

将来は間違いなく美人になるだろう……そう確信できるほどの美少女だ。


本当は先を急いでいるのだろうか、外に手をかざして困ったような表情をしている。


「傘、持ってへんの?」


オレは彼女の目の前まで近づくと、顔を覗き込んで尋ねた。

近くで見るとさらに可愛らしく感じた。

あまりの美形ぶりに、彼女だけ背景から浮いているというか、まるで現実感がないような、そんな気さえする。


彼女は一瞬ビクンと体を震わせて、そのままオレから目を逸らせた。


なるほど。

知らない“おっちゃん”に声を掛けられても無視しろ……てか。

ちゃんとしつけが行き届いているらしい。

最近は物騒な事件が多いし、そのつれない態度は当たり前のことのようにも思えた。


オレはできる限り優しい声と表情を心がけた。


「これ、使い」


そう言って、ズイッと自分の傘を彼女に差し出す。


だけど彼女は表情を硬くしたまま、警戒し続けている。

ん――困ったなぁ。


あ。そや……。
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