あなたの左手、 私の右手。
先輩はいつものように私の頭を撫でてから家をあとにした。

先輩のいない家。

日常に戻っただけだ。


先輩がいたことが非日常的なことなのに。

先輩がいないことが当たり前のことだったのに。


先輩が帰った家の中がやけに広くて寂しく見える。


仕事に向かう先輩の大きな背中が離れていくことに寂しさを感じてどうしようもなくすぐに会いたくなる自分の気持ちを素直にうけとめながら私は現実に戻らなくてはと大きく深呼吸をした。
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