あなたの左手、 私の右手。
「ま、はじめての接待にしては上出来だな。」
帰りのタクシーの中、先輩は私に微笑みかける。
その表情がいつもと少し違うのは、かなりお酒を飲んでいるからだろう。
社長に注がれるお酒をハイペースで飲んでいく先輩。
足元がふらついてもいない。

一方私は佐々木さんの助けもあって、ビールをコップ2杯くらいのんだだけで済んだのに、足元がふらついて、先輩に担がれるようにしてタクシーに乗った。

「先輩はすごいですね、あんなにお酒のんだのに。・・ヒクッ・・・」
「ははっ、お前は弱すぎやろ。この酒豪ぶりで勝ちとったイベントも多かったで。」
「私も強くなれるかなー」
「別にいいやん。強くならんでも。その分俺がのむで。」
先輩の顔を見ると先輩は眠そうに目を閉じていた。

ずっとペアを組んでいるかどうかはわからない。
いつか私が独り立ちをしたら、先輩と離れることになる。

心のどこかでそんなことを考えていた私。
先輩の言葉がまるでそんな未来への不安を消してくれているような気がした。
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