子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
(紬。私達の元に生まれてきてくれて、ありがとう)

これはいつ頃のことだったろうか?
大きなケーキを前に、満面の笑みを浮かべて座る私。おそらく、幼稚園ぐらいの頃だろうか。

両親に促されて、勢いよくローソクの火を消した。けれど、うまく消せなかった数本もあって。

どの場面を思い出してみても、あの日一日はずっと笑顔でいた。


あの時は、誕生日のケーキとプレゼントで頭の中がいっぱいで、一日中浮かれていた。嬉しくて楽しい、一年でたった一日の特別な日。
父も母も、私と同じように幸せそうな顔をしていることに、ますます嬉しくなって……


本当はわかっていた。
私の両親にも、幸せな時間が確かにあったことを。


二人が、お互いの愚痴を私に言っていた時、ただ聞くだけじゃなくて、何かを言えばよかったのかもしれない。

「お父さんも、私達のために頑張ってくれているから、少しぐらい仕方ないよね。疲れてるんだよ」

「お母さんも、家でだけど仕事をしてて、いつも大変そうなんだよ。お父さんの手助けは、きっと助かってると思う」


そんなふうに伝えてあげてたら、二人は今でも一緒にいられたのかもしれない。


いつだってそう。
あの時、こうしていたら……って、後から思うばかり。

いつだってそう。
思っていることがあっても、素直に口に出せなくて後悔するばかり。

たとえばあの時、両親に不満をぶちまけるだけじゃなくて、もっとこうして欲しかったって素直に言えてたら……
2人とも、〝わかった。これからはそうしていこう〟って前向きなこと言ってくれてたかもしれない。
離婚は避けられなかったとしても、もっと良い関係を保てていたかもしれない。


自分の気持ちに気が付いた時、素直に伝えられていたら、もっと違う未来が待っていたのかもしれない。



柊也さんにも……自分の気持ちに気付いた時に、ちゃんと打ち明けていたら……
この子も、母子二人とは違った家族の形で迎えられていたかもしれない。










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