子作り契約結婚なのに、エリート社長から夜ごと愛し尽くされました
「紬さん」

微笑ましく見てたら、由希さんに突然畏まった様子で呼ばれた。

「俺様で世話の焼ける柊兄を貰ってくれて、ありがとう」

俺様……やっぱり、共通認識だったのね。

「おい。世話が焼けるのはおまえの方だろ、由希」

「うるっさいなあ。そのオカンみたいなところは、昔っから変わらないんだから」

「んだと!?」

怒り狂う柊也さんを他所に、私の方へ向き直る由希さん。

手を差し出して近付いてくる由希さんからは、あの時と同じ香水の香りがした。今はもう、この香りで吐き気をもよおすことはないみたい。

この距離感、この勢いの由希さんなら、香りが移ったりファンデーションがついたりしちゃいそうだわと、妙に納得させられてしまった。
そして、柊也さんがそうであるように、思わず手出し口出ししてあげたくなるような子だとも思った。


その後、買ってきてくれた料理やケーキを3人で一緒に食べながら、楽しい時間を過ごした。

柊也さんの子ども時代の話も、すっごく貴重だ。
由希さんの言う柊也さんのご両親って、柊也さんが言っていた里親のことのはず。
由希さんから聞く限り、柊也さんはちゃんと愛されて過ごしていたことが伝わってくる。そのことに、心の底からホッとしていた。

それにしても……
ふーん。ピーマンが苦手ねぇ。それは今でものはずだって、いいこと聞いたわ。



由希さんは、以前少しだけ聞いていた過去なんて全く感じさせない、明るくて楽しい人だった。

「赤ちゃん、楽しみだね」

なんて言葉を残して、迎えに来てくれた旦那様と共に帰っていった。
由希さんも、今は幸せいっぱいって感じだ。








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